JA三井リース株式会社 サービス産業本部 メディカルヘルスケア部
池田武彦ビジネスリーダー
開業成功に向けた7つのカギ
・開業は成功させなければならない
・物件の評価が永遠に変わらないという保証はない
・コンセプトは開業という航海を進むための最も重要な「地図」
・お金の計算できますか?
・最適な答えは知るのではなく探し出す
・固い事業計画で資金調達のプランは柔軟に
・本当に開業したいのか
0.コンサルタントではなくパートナーですので料金はいただきません
当社が開業を検討されているドクター向けに展開する無料サポートサービス「Medit」というのは、これまでにない開業支援サービスです。
私たちの立ち位置を最初にはっきりしておきますと、コンサルタントではありません。私たちはディスカッション・パートナーなのです。
コンサルタントであれば先生の問いかけに対して、正誤は別にしても100%回答すると思います。しかし私たちは100%の回答を約束できませんし、そもそも回答を出すことを目的としていません。ご自身の開業を真剣に考える先生があまりご存じない分野や見落としがちなポイントを、ディスカッションの中で私たちが問題提起することで、先生の開業がより良い方向へ進むことが最大の目的です。
もちろん私どもはリース会社ですので金融については専門ですし、開業に関わる建築や内装、医療機器についてもひととおりのことは知っているつもりですが、先生の問いかけに100%の回答をお約束できるものではありません。しかしこれまでの経験と当社のネットワークにより「似たようなケースではこのような対応をしたことがあります。」や「パートナー企業に話を聞いてみてはいかがですか。」というような形で先生がより良い決断をするためのお手伝いをすることは出来ます。
ちなみに私たちが開業支援をするにあたって、「ウチから何か買ってください。」、「パートナー企業を使ってください。」とお願いすることはありません。さらに私はリース会社に所属していますが、私自身がお手伝いをする先生のリース契約に関与することもありません。
これは建設的なディスカッションをするためには、コンサルや業者さんのような主従関係ではなく、パートナーとして対等な関係でなければならないと考えているためです。私たちと先生は対等なパートナーですから耳障りな意見を申し上げる場面も少なくありません。
では私たちが開業する先生に期待していることは何かというと、先生に「Medit」をより良くするお手伝いをして頂くことです。 「Medit」のスタッフは営業もせず開業をする先生方のサポートを一所懸命しますから、先生が開業してうまくいったら、「なぜ先生のところがうまくいっているのか、先生のクリニックが流行っている理由は何か」といった有益な情報を頂きたいのです。
先生から頂いた情報を「Medit」のノウハウとして活用することで「Medit」が成長し、次に「Medit」が支援する先生の開業をより良く導くことが出来ます。
つまり「情報のギブ&テイク」で成り立たせているのが私たちの「Medit」の仕組みなのです。
私たちは先生からお金を頂きません。その代わり、新規開業に悩んでいるドクターをお連れすることがありますから、その時にはご自身のご経験をお話しいただくといったご協力をお願いしたいんです。
新規開業した後のドクターは、だいたい皆さん必ずマリッジ・ブルーのような、「開業ブルー状態」に陥ります。だけど医局の先輩のところに話を聞きに行っても、先輩は「オレは最初からうまくいったよ」とかっこいい話しかしてくれないものです。私たちが間に入ってご紹介すると、「勤務医時代のほうが楽だった」とか、「お金は入ってくるけれど身体はきつい」とか、「人事労務の事務が大変だ」と、先輩開業医は本音を話してくれます。
別に私たちはコンサルティング料をもらっているわけではありませんから、ご相談いただいた先生方に無理に開業していただく必要はないんです。
私たちがご紹介する企業もある程度肩の力を抜いて先生のご開業をお手伝いすることになります。その結果として、かえってうまく開業が成功しているというケースがたくさんあります。
開業を望まれる先生方とディスカッションをする中で、これまで勤務医だった先生方のありがちな開業に対する誤解や、思い違いのパターンがいくつかあることに気がつきました。今日はそのお話しをしたいと思います。
開業ドクター向けに無料サポートサービス「Medit」を展開
1.開業は成功させなければならない
「開業したら私生活と仕事のバランスを取って、勤務医の間はできなかった家族サービスをしたい」というご希望の先生がいらっしゃいました。
「忙しいのは嫌だ」というのは誰しも同じです。しかし「土日は休みたいし夕方は早く帰りたい」という気持ちで開業しても、うまくいくはずがありません。開業するのであれば、まず「成功すること」を第一に考えて、「医者はサービス業だ」と割り切って土日の診療を行う必要すら出てきます。
この先生はショッピングセンターの中で開業し土曜日曜も診療して、現在はかなりの繁盛クリニックになっています。
また、脳外科のクリニックで、「MRIを入れた重装備の開業をしたい」という先生がいらっしゃいました。当然、開業前にお金をためる必要がありますから、国立病院にいらっしゃる先生であれば民間病院に転出して頂いて開業資金を稼ぐ必要がありますし、MRTさんでアルバイトに精を出される先生もいます。
開業コンサルタントに相談すると、「とにかく早く開業させたい」と不十分な準備で開業するケースもあるようですが、私たちは別に早く開業していただく必要性を感じないので、必要な資金はじっくり貯めていただいてから開業しすることをアドバイスしています。
とにかく開業は、成功させることを目標に、全力で取り組むべき大仕事なのです。
2.物件の評価が永遠に変わらないという保証はない
多くの開業コンサルさんも同じかもしれませんが、「Medit」にご相談頂く際の第一声は「どこか良い物件はありませんか」というケースがとても多いです。多くのドクターが物件を一所懸命探されますが、自分の専門にも合っていて、生活の条件も整っているという物件はなかなかありません。
だいたい、「誰にとっても良い物件なんかありませんよ」としか申し上げようがありません。それに物件が良ければ、誰でも開業しさえすれば患者さんが押しかけてくるというわけではありません。
開業場所をなかなか決められない先生は、「このような物件で開業をしたい」というコンセプトがあまりにも明確すぎるケースがあります。「競合がいなくて、値段もやすくて、場所も良くて一階で、子どもの通学にも便利……」という物件を探す先生です。このような場合、準備にも十分な期間をかけても場所が一向に決まりません。よい物件を見つけても「もっと良いところがあるのではないか」と迷ってしまうからです。
調べ続けて選択肢を出すことはできても、100点満点の物件という結論を出せないわけです。
私がそのような迷う先生に申し上げるのは、
「物件について簡単に妥協しないでください。妥協をせずに探す努力も当然必要です。」 「だけど青い鳥を探している可能性もあるので、どこかであきらめる部分を作る必要もあるかもしれません。あきらめきれないのであれば、先生にとって理想的な物件を発見するまで探し続けるしかないでしょう。」
「ところが現時点で100%理想的な物件と思っていても、5年後もその物件がそのままの条件を保っているかどうかはわかりません。今は80点であっても、5年間いろいろな条件を足していけば、100点になるかもしれませんよ。」 ということです。
ですからきちんと診察ができる先生には、最初から終の棲家を見つけるのではなく、ステップ・バイ・ステップで理想的な物件にしていくことも考えられます。事業計画はだいたい7年で立てますから、7年間で回収できるように考えるならば、40歳過ぎで開業しても60歳まで3回新規開業することができます。
今後は40歳で開業して、その後新規投資せずにすませるというのは通用しないと思います。10年程度たったら場所を移らないにしても、もう一度新規開業するつもりで事業点検してみる必要があります。であるならば、最初は80点の物件で始めるというのもひとつの考え方なのです。
開業場所をなかなか決められない先生は……
3.コンセプトは開業という航海を進むための最も重要な「地図」
私どもはディスカッション・パートナーを自認しておりますが、最初のご面談からディスカッションがスムーズに進む先生は全体の3割くらいだと思います。このような先生方は、「Medit」を最大限活用して頂きながら開業コンセプトを自ら磨き上げ、開業準備をトントン拍子に進め開業後も順調にいくケースが多いです。
7割方の先生は、初めてお会いした時点では「自分に合った開業プランを作って進めて下さい」という感じの、そのままでは「Medit」をご利用頂くことが難しいタイプです。
2つのタイプの差は、「ご自身の開業コンセプトをお話し頂ける先生か」ということです。これが出来る先生は、ディスカッションもうまくいきます。
開業準備を進めていく最中には勿論、開業してからも先生の環境は変化し続けます。その前段階である開業を検討している段階で、ご自身がどのような開業をしたいのかという「開業コンセプト」を確立していれば、環境が変化しても自らの立ち位置を把握して対応することが出来ます。
勿論、最初のご面談でコンセプトが明確となっていなくても、ディスカッションを繰り返すことでコンセプトを確立できる先生がほとんどです。
どうしてもご自身で開業コンセプトを作ることができない先生もいらっしゃいますが、そのような方はコンサルさんにお金を支払って、コンセプトを立ててもらうパターンも有用でしょう。
ただコンサルさんが立てた開業コンセプトに基づき進める開業で恐ろしいのは、何か問題があった場合に軌道修正がきかないということです。
当社がリース会社として開業する先生に関わるときには、先生の事業計画を拝見しますが、先生ご自身がその計画を作ったのか、コンサルさんに頼んだのかはその時には私たちにはわかりません。その事業計画が実現していれば、全く問題はないのですが、経営がおかしくなってから事業計画に基づいて先生に改めてお話を聞いてみると、「いえ僕はそう考えてはいませんでした」なんてことが少なくありません。
私たちがお金を貸している場合には私たちにも「貸し手責任」がありますから、無料奉仕でコンサルに入ることになります。すべてのデータを出していただいてお話を伺うのですが、そうしたケースの先生は見事に自分の置かれている状況が把握できていません。ご自身が経営的に今どこにいるのかが全くわかっていないのです。
経営がうまくいかなくなったクリニックは、だいたい開業時のコンセプトから外れてしまっています。自分がやりたかったことや考えたことは何だったのか忘れているのです。
クリニックの名称や診療時間、診療として行うこと、スタッフの質、事業計画は開業コンセプトを中心に有機的に結び付いたものです。
「一流料亭の味を提供する」という計画を立て、スタッフは「フランス料理」のスタッフを集め、「中華料理」の道具を用意するということでは、お客さんが離れていってしまうのは当たり前です。まずどのようなレストランをつくりたいのかというコンセプトから作らなければいけません。
経営がおかしくなった開業医の先生は、とりあえず収入を確保するために当直のバイトをされていたりします。私たちが関与する場合には、同年代でうまくやっておられる開業医のところで昼間働いていただいて、どのようにやればうまくいくのかを側で見て研究していただいたりします。どうも、周りの先生が何をしているかを見ていない人が多いようです。そういう形で建て直しを図れば、クリニックの場合はだいたい立て直すことが経験上可能だと思います。
経営がうまくいかなくなったクリニックは……