スーパードクターのぼやき(後編)

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慶友銀座クリニック院長
http://www.ginzaclinic.com/
大場俊彦先生

風邪すらひくこともできないのが医者の定め

アルバイトの先生を頼む場合は、自分の代診として頼む人が多いのではないかと思いますが、私は必ず横で一緒に診察するようにして、診察のクオリティーとサービスのレベルを保つようにしています。これは当院の特徴かもしれません。しかし私は休むことができないのでとてもキツイです。その分私は土日しっかり休んで英気を養うことにしています。

週末の二日間都心の一等地のビルが遊んでいるわけですから、その分コストがかかってきます。ですから200人/日患者さんが来ていただけるにしても、ドクターやスタッフのコストなどと合わせてとても大変な思いをしながらやっているというのが実情です。

とにかく開業医は診療に穴をあけることができません。これは開業医だけでなくて医者というものはすべからくそうだと思います。

私は病院に勤めているときにひどい扁桃炎にかかったことがあって、点滴をしながら外来を診たことがあります。そうしなければ患者さんが押し寄せてきているのでパニックになりかねない状況だったからです。この時はさすがに患者さんからクレームがきて病院側に怒られました。だけど、では診察を休めるかというと、そうではないわけです。

患者さんにとっては、医者の都合など知ったことではありません。市中病院でも、体調が悪いぐらいで診察を休むということは考えられません。風邪をひくこともできないというのが医者の定めでしょう。

昔は医局からの医師派遣があったので、なんとか人のやりくりがついていたのですが、制度が変わり今は研修医がまわってこないこともあり、どこもあっぷあっぷです。外部に派遣していたのでは、大学病院の診療が止まってしまいます。われわれとしては、そういう時代の中で、患者さんにとって必要な診療レベルを保つために、ドクターの確保が必要です。そのためには、MRTのような信頼できる会社があってくれて本当に助かっています。

開業医は奥さんと仲良くするべし

私は39歳のときに開業を考え始めて、40歳過ぎで開業することができました。

大学からの派遣でいろいろな病院勤務を経験したので、人の使い方や組織にとけ込むやり方をそのつど勉強できました。大学の医局と違って、自分が新しく評価されるような世界に飛び込んでいくような経験は、開業医にとっては絶対に必要なものだと思います。その意味では、医師のアルバイト経験は貴重なのではないでしょうか。

それから開業の時にはやることがとても多いので、最初から成功するということはあり得ないと思います。自分が事務長を兼ねて、スタッフの人事や総務的なこともしなければなりません。医局にいるときは、労務のことなど考えたこともないものです。

昔であれば事務長さんを雇うことができたのですが、いまは自分の給料ですら払えるかどうかすら難しい時代です。コンサルタントは「私たちにお任せください」と言いますが、それでうまくいくということはありません。もしその人たちが辞めると、その瞬間にクリニックは回らなくなってしまいますし、まず回らなくして去っていくでしょう。

もうひとつ開業医にとって大切なことは、奥さんと仲良くすることです。開業する場合はまず個人事業主として開業すると思います。その後法人化も昔は考えられましたが、法改正によりメリットが少なくなりかなり減りました。個人事業主であるということは、自分のポケットマネーで経営をやるということに限りなく近いと思います。ということは、クリニック経営は家庭と一体なのです。ですから奥さんとの二人三脚が必要になってきます。

簡単に言うと、自宅のリビングで子供と遊びながら、あるいは食事をしながら、最低でも年間5000万円レベルの事務をこなさなければならないということです。おかげで月末は我が家のダイニングテーブルの半分は請求書と領収書に占領されることになります。これは奥さんとの協力関係がなければできるものではありません。

新しい医療機器を買うときにも、家計の中でやりくりするわけですから、医療機器の必要性や、値引きの有無について奥さんのチェックを受けることになるというのが開業するということです。

医療機器業者は、自分とこの在庫品を高く売って整理することしか考えていません。「病院の経営にとって一番いいことをしてくれる」なんてことはないんです。ですからだまされないようにするためには、身内の厳しい目でリスクを判断しながら一歩ずつ進んでいくしかありません。

しかし勤務医の時には奥さんに対してお金のことなど相談することはまずありません。新しい医療機器がほしいと言ったら、勤務医時代は上司はやる気のあるやつだと褒めてくれたかもしれませんが、開業医の妻はまずコストとして考えます。

ですからドクター自身も認識を改める必要がありますし、奥さんにも変わってもらう必要があるかもしれません。開業を成功させるためには、すべてを奥さんと相談しながら、他人に頼らず、自分たちでやっていく以外にはないと思います。

(インタビュー実施日 : 2010年3月14日 この記事は個人の感想によるものです。)



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